平成一一年(ワ)第三六三八号損害賠償請求事件

原 告 佐木 理 人
被 告 大阪 市

平成一二年二月一四日

被告訴訟代理人
弁護士 飯田 俊 二
同  川口 俊 之

大 阪 地 方 裁 判 所
第一七民事部イ係 御中

準 備 書 面(三)



第一、「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施 設整備ガイドライン」の法的性質。

右ガイドラインは、現在及び将来の施設整備の一応の指針を定めたものであり、法律上の拘束力を有するものはない。

第二、ガイドライン記載の不適合と義務違反等の有無。

一、原告は、本件ホーム終端のホーム縁端警告ブロック(以下「縁端警告ブロック」という)の設置方法、同所の転落防止柵の不存在、並びに本件事故当時に現場に駅員が配置されていないことをもって、国家賠償法一条、同二条、商法五九〇条の責任があると主張するものである。
その根拠として、平成六年三月に作成された「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備ガイドライン」を掲げている。

右ガイドラインは、交通施設整備の一応の指針を定めたものであり、駅舎の形状(地上駅か地下駅か)、ホームの形状(島式か相対式か)、ホームの長さ、ホーム上の柱や階段の位置、ホーム終端の乗降設備の有無、列車長、編成車輛数、乗降客数等により、技術的標準を変更することを容認している。それは、字句上も「標準」と記載されたり「望ましい」と記載されていることが窺われる。
したがって、右ガイドライン記載の技術標準に厳格に適合しないからといって、直ちに「故意又は過失による違法な権利行使になったり」「営造物に瑕疵があることになったり」「旅客運送契約上の義務に違反すること」はないのである。以下、ガイドラインの記載と御堂筋線天王寺駅一番ホーム(以下「本件ホーム」という)において、大阪市地下鉄のとっていた処置内容とその理由を明らかにする。


二、ホーム終端部の縁端警告ブロックの設置方法

(一)用語 −図省略−
(二) ホーム縁端と縁端警告ブロックの間隔
1、ガイドラインの技術的標準
視覚障害者のホーム縁端からの転落又は列車との接触事故の発生を防止するため、ホームの縁端は警告ブロックを設置して危険を防止し(同五三頁)、プラットホームの縁端部の危険表示として、警告ブロックを縁端から八〇センチメートル以上の位置に幅三〇〜四〇センチメートルで連続して設置することが望ましい(同六五頁)。
と記載されている。
2、本件ホームの縁端と縁端警告ブロックの間隔
本件ホームの縁端と縁端警告ブロックの間隔は、約七二センチメートルである(被告準備書面(一)の18頁に「約八二センチメートル」とあるのは誤記である)。そのような間隔をおいて縁端警告ブロックを設置した理由は、大阪市地下鉄では縁端警告ブロックを直線に連続して設置して視覚障害者が触知し易くするとともに、触知して歩行中にホーム上に存する柱等に衝突することがないようにしているからである。
     少し詳しく説明すると、本件ホーム中央部には昇降階段があり、その階段部で最もホーム幅が狭くなっており、階段の柱とホーム縁端の距離は約一五〇センチメートルである。
     もし、ホーム縁端から八〇センチメートルのところに三〇センチメートルの縁端警告ブロックを設置すると、縁端警告ブロックの階段側と階段柱との距離が四〇センチメートルとなり、縁端警告ブロックの階段側を杖又は足で同ブロックを覚知して歩行している視覚障害者が、階段の柱に衝突してしまう危険が存する。
     そのため、縁端警告ブロックを八センチメートルばかりホーム縁端にずらして、一方では、縁端警告ブロックの階段側を歩行する視覚障害者が階段の柱に衝突することがないように配慮し、かつ他方では、縁端警告ブロックのホーム縁端側を歩行する視覚障害者が線路に転落したり列車に接触したりすることがないように配慮したものである。
     右のような措置は、ガイドラインが「誘導・警告ブロックは、駅の平面計画等を考慮した歩行しやすい設置とすることが望まれる」としている(同六五頁)ことから、「八〇センチメートル以上の位置に・・設置することが望ましい」とする技術的標準においても、許容しているものと考えられる。
     なお、谷町線天王寺駅のホーム縁端と縁端警告ブロックの距離が約六二センチメートルとなっている(第一回原告準備書面二七頁)のも、同ホーム上に柱が存するため上記と同様の考慮がなされているからである。
   3、他の鉄道では、縁端警告ブロックの設置位置をホーム縁端からどのくらいの距離にしているか、ホーム上に柱や階段等があるときに縁端警告ブロックの設置方法を変えているか等については、第三記載のとおりである。

(三) ホーム終端部における縁端警告ブロックの形状
    1、ガイドラインの技術的標準
     ガイドラインの姿図、寸法や鉄道ターミナルモデル図によると、ホーム縁端に沿ってホームを内側に囲い込むように縁端警告ブロックが設置している(同五三頁、九九頁)。
    2、本件ホームの東終端(以下「本件ホームの終端」という)における縁端警告ブロックの形状本件ホーム終端においては、縁端警告ブロックは、直角にホーム北端の壁面に延びているが、ホームを内側に囲い込むようにはなっていない。ホームには、ホームの両側に線路のあるもの(以下「島式ホーム」という)と、ホームの片側だけに線路のあるもの(以下「相対式ホーム」という)がある。ガイドラインの姿図や鉄道ターミナルモデル図においては、島式ホームを念頭に置き、同形状のホームではホームの両側から線路への転落の危険があるので、縁端警告ブロックでホーム内側を囲い込むようにしている。
ところが、本件ホームは相対式ホームであるため、ホーム縁端と反対側から転落する危険がないため縁端警告ブロックでホーム内側を囲い込む必要はなく、縁端警告ブロックを直角にホーム北端の壁面に延ばしたにとどめたのである。
右設置方法をもって、ガイドラインに反するものとは考えられない。なお、縁端警告ブロックは、視覚障害者にホームの縁端が存在するという危険を警告するとともに、同ブロックを触知して歩行している限り、ホーム縁端から転落することはない旨の安全情報の発信もしているのである。
縁端警告ブロックを触知しながら、歩行していて途中で同ブロックを触知できなくなったときには、後者の情報が途絶えたのであるから、直ちにその場で停止して白杖等で縁端警告ブロック又は誘導ブロックを探し、縁端警告ブロック又は誘導ブロックを触知することができれば、それに従って進み、縁端警告ブロック等を覚知することができなければその場で助力を求めて待つか、列車の進行音、構内放送、人の歩行音、列車の進行に伴う風の方向等で安全な進行方向を確認してから進むべきである。
縁端警告ブロックを触知できなくなったときに停止することが原告の主張するように「視覚障害者にとって死亡との対面を命令されているようのもの」とは到底考えられず、触知できないのに進行する危険の方がはるかに大きいと思われる。
    3、他の鉄道では、ホーム縁端部において縁端警告ブロックをどのような形状にしているかは、第三記載のとおりである。

(四) ホーム縁端部における縁端警告ブロックの屈曲する角の内角の警告ブロックの有無。
   1、ガイドラインの技術的標準
   ガイドラインの技術的標準では「水平通路の誘導ブロックを連続して設置することが望ましい。また、迷いやすい曲がり角や分岐では警告ブロックを設置して注意表示とする」(同六五頁)、姿図・寸法では誘導ブロックが直角に分岐するときには、直角を構成する三枚のブロックを警告ブロックとし、かつブロックが三〇センチメートル角の場合には直角の内角部にもう一枚警告ブロックを設置するよう図示されている。ブロックが四〇センチメートル角のときには、直角の内角部には警告ブロックを設置しない図示がなされている(同六六頁)。
警告ブロックが直角に分岐する場合については、標準も図示もない。

また、警告ブロックが直角に誘導ブロックに分岐する場合についても、図示の方法一致していない。(六六頁)。
    2、本件ホーム終端部における縁端警告ブロックは、三〇セ ンチメートル角であり、連続して設置されてきた同ブロックが屈曲する角の内角部にもう一枚警告ブロックを設置していない。
ガイドラインには、誘導ブロックの分岐の場合のブロックの設置方法については記載があるが、警告ブロックの分岐の場合のブロックの設置方法の記載がなく、各鉄道事業者の判断にまかせている。
(各鉄道事業者がどうのように処置しているかについては、後記第三のとおり。)
縁端警告ブロックの触知は、付近にホーム縁端があるという危険信号であるとともに、それを触知して進行している限り線路への転落や列車の接触の危険がないという安全信号でもある。
     これを触知できなければ、他の安全情報や介助が得られるまで停止するべきなのである。
     でないと、直角の内角部にもう一枚警告ブロックを設置してもあまり効果が期待できない。
     言い換えると、縁端警告ブロックを触知しながら歩行する人には、同ブロックのホーム縁端よりを歩行する人、同ブロック上を歩行する人、同ブロックのホーム縁端と反対側を歩行する人がいるのであり、前二者にとっては、直角の内角部にもう一枚の警告ブロックを設置しても触知することは少なく、あまり意味がない。
     このような見地から、ガイドラインは、警告ブロックが直角に分岐する場合のブロックの種類、設置方法につき定めをせず、各鉄道事業者の判断に委ねているものである。
     縁端警告ブロック不触知・直ちに停止原則の遵守がホーム縁端からの転落防止にとって最も大切なのである。このことからみて、直角の内角部にもう一枚警告ブロックを設置していないことが直ちにガイドラインに反することにも、ホームに瑕疵があることにも、旅客運送契約上の義務違反があることにもならないのである。

      3、他の鉄道では、ガイドラインに記載のない縁端警告ブロックの分岐部をどのようにしているかは、第三記載のとおりである。

三、ホーム終端部の転落防止柵の有無。

広義の転落防止柵には、 ホーム上に線路と平行に設置されている柵(以下「狭義の転 落防止柵」という)と、ホーム上に線路と直角に設置されている柵(以下「立入禁止柵」という)がある。
以後、特に言及しない限り、転落防止柵は狭義の転落防止柵をいう。
(一)用語 −図省略−

(二)ホーム終端部の形状・設備等
ホームの終端部は、駅により、かつホームにより、階段、エレベーター、エスカレーター等の昇降設備のあるもの、トイレや駅員の控室があるもの、単に壁や立入禁止柵があるもの、その他これらが組み合わさられたもの等種々である。また、ホームの長さ、発着する列車の長さ、乗降客数、同一ホームでも乗客を乗せる位置と降客を降ろす位置が異なるもの等駅によりかつホームにより区々である。

   (三)ガイドラインの技術的標準
ホーム両端には、「危険」を防止するために高さ一一〇〜一五〇センチメートル程度の柵を設ける(同五三頁)。
と記載されている。
この危険は、「ホーム終端部」からの転落防止と、「ホーム縁端」から線路への転落の危険、「ホーム縁端」での列車と接触の危険を言うものと思われる。ホーム両端に設置される広義の転落防止柵には、線路に平行に設置されている狭義の転落防止柵と、線路に直角に設置されている立入禁止柵があるが、右二種類の柵の設置の必要性・相当性を判断する要素は異なっている。
例えば、ホームの終端部が階段、エレベーター、エスカレーター等の昇降設備になっていたり、トイレや駅員の控室となっていたり、壁となっていたりするときには、立入禁止柵の設置の必要はなくなり、狭義の転落防止柵の設置の必要性と相当性が検討されることとなる等である。

   (四)本件ホーム終端の立入禁止柵・転落防止柵の設置の有無。
本件ホーム終端には、立入禁止柵も転落防止柵も設置していない。
      1、本件ホーム終端に立入禁止柵を設置していない理由。
本件ホーム終端部は壁になっており、さらに壁から六センチメートルの立入禁止札が設置されているので、ホーム縁端との空間は三四〜四〇センチメートルである。
このような箇所にまで通常乗降客が立ち入ることはないので、立入禁止柵を設置していない。
仮に視覚障害者が誤って右箇所に至っても、杖又は手足や身体を壁に当てたりして、危険を察知でき、杖で周囲を触ればホーム縁端や終端を覚知して停止できるからである。
他に、電車の音、構内放送、進行列車の風圧により、危険を覚知することも可能である。
      2、本件ホーム終端に転落防止柵を設置していない理由。
平成六年改正前の普通鉄道構造規則第三三条(プラットホーム)六項に「プラットホームの有効長は、当該プラットホームに発着する最長の列車の長さに五メートルを加えた長さ以上としなければならない。ただし、等のためやむを得ない場合であって旅客の安全かつ円滑な乗降の支障を及ぼすおそれのないときには、この限りでない」と定められ、鉄道事業者は、これに法的拘束され、軌道事業者も右規則を参考にして、それぞれの駅、それぞれにホームにつき合理的判断をして、プラットホームの有効長を設定していた。平成六年に右規定が「プラットホームの有効長は、当該プラットホームに発着する列車の最も前方にある旅客車から最も後方にある旅客車までの長さのうち、最長のものの長さ以上であって、かつ旅客の安全及び円滑な乗降に支障を及ぼすおそれのないものでなければならない」と変更された。
右規定の変更により、鉄道事業者はそれぞれの各駅の特性、ホームの形状、編成車輌数とその時間的変化、乗客数、乗降客の移動方向等を考慮して合理的判断でプラットホームの有効長を設定することとなった。
プラットホームの有効長の設定は、転落防止柵の設定の基準でもある。
鉄道事業者では、細心の注意を払っても、人間の能力の限界やシステム上生じる瞬時の失効から、列車は必ずしも停止位置に停止できずに停止位置をオーバーする事態が生じることから、そのようなときには列車をバックさせることなく、旅客の安全かつ円滑な乗降を図り、ひいては列車の定時運行を確保することも考慮して、それぞれ転落防止柵の設置をしている。軌道事業者である大阪市地下鉄では、右鉄道事業者と同様、各駅の特性、ホームの形状、編成車輌数とその時間的変化、乗客数、乗降客の移動の方向、列車の制動特性等を考慮して、原則として停止線前約五メートル、停止車輌後部約一メートルには転落防止柵を設置しないことにしている。
ホーム終端部や停止線付近に旅客の乗降口・改札口、乗降階段・エスカレーター・エレベーター等の乗降設備等があり、ラッシュ時に旅客がホームに(例えば、御堂筋線天王寺駅二、三番線西端)あふれて押されて線路に転落する高度に危険性のあるところでは、旅客の安全かつ円滑な乗降を確保するため、列車停止線から約五メートルの間隔を置かずに転落防止柵を設けている。
       右のような考慮にもとづく本件プラットホームの有効長の設定(転落防止柵の設置の基準)は、ガイドラインの趣旨に反しないものと思われる。
       本件ホームの終端や停止線付近には、旅客の乗降口・改札口・乗降階段・エレベーター・エスカレーター等の乗降設備もなく、ラッシュ時に旅客がホームにあふれて押されて線路に転落する高度の危険がないのであるから、約五メートルの間隔があるも転落防止柵を設置してない。
     3、「原則として停止線前約五メートルの間隔に転落防止柵を設置しない基準」が守られていないとの批判について。
       原告は、大阪市地下鉄の「原則として停止線前約五メートルの間隔には狭義の転落防止柵を設置しないとの基準」が守られていないと非難する。
       しかし、その非難のもとになった原告の調査の際の測定方法は一部誤りがあったり、付近に改札口や乗降階段がある等基準の例外事由が存することを考慮していない(乙第二七号証大阪市地下鉄各駅各ホームの転落防止柵設置状況等)。
       これらを考慮すると、転落防止柵の設置状況はほぼ基準に一致する。堺筋線の駅については、連結車輌数の増加により、右基準に一致しないホームが一つ存するだけである(右同号証)。
       したがって、大阪市地下鉄の転落防止柵の設置状況が著しく不一致であって、その合理性が疑わしいという原告の非難は当たらない。
      4、視覚障害者団体から本件事故後には本件ホームの終端に転落防止柵設置をしてもらいたい旨の要請はあったが、本件事故前にはまったくなかった。被告の記録では、平成六年一二月に初めて視覚障害者の団体から口頭にて、一般的な柵の設置の要請を受けたとあるが、前記基準と理由を説明してそれなりに納得いただいているものと考えている。
したがって、具体的に本件ホーム終端部に転落防止柵の設置要請がありながら放置していたという事実はない。

第三、他鉄道の駅の縁端警告ブロック並びに転落防止柵の設置状況
    一、近畿地方のJRを除く主な一一駅の縁端警告ブロック並びに転落防止柵の設置状況。
      前述したようにガイドラインも普通鉄道構造規則も、各鉄道事業者において、駅舎形状(地上駅か地下駅か)、ホームの形状(島式か相対式か)、ホームの長さ、ホーム上の柱や階段の位置、ホームの終端の乗降設備の有無、列車長、編成車輛数、乗降客数、乗降客の移動方向、列車停止性能等を考慮することにより、合理的な範囲内で本件縁端警告ブロックの設置方法や転落防止柵の設置方法を決しうることとなっている。
そこで、まず近畿地方のJRを除く主な一一の駅につき、縁端警告ブロック)の設置状況と、狭義の転落防止柵の設置状況を調査した(乙第二八号証の1写真番号1〜44)。
   (一)ホーム縁端と縁端警告ブロックの間に八〇センチメートル以上間隔をとっているか。
     京阪電鉄の北浜駅(六四センチメートル)(No30〜32)、淀屋橋駅(六〇〜七五センチメートル)(No33〜36)を除き、おおむね八〇センチメートル以上の間隔があった。古い地下鉄駅である北浜駅や淀屋橋駅では、ホーム幅が狭いために右間隔がとれないものと思われる。
これらには、已むを得ないものとしてガイドラインも許容しているものと思われる。
(二)ホーム終端部において、縁端警告ブロックは囲い込み又は線路の反対側へ屈曲しているか。
      おおむね囲い込み又は線路反対へ屈曲しているが、線路の方に屈曲していたり(No12,13)、屈曲とつき抜けが併存していたり(No26〜27′30〜31)している。
      線路の方に屈曲させているのは、その先に転落防止柵が設置されているからである(No12,13)。
      屈曲とつき抜けが併存しているときには、立入禁止柵はあるが転落防止柵がないもの(No30,31)や、立入禁止柵はないが転落防止柵はあるもの(No26〜29)などがある。
      設置の方法の基準は区々である。

(三)ホーム終端部の縁端警告ブロック屈曲部の内角にもう一枚警告ブロックが設置されているか。
     調査した範囲では、阪神電鉄、阪急電鉄、京阪電鉄、近畿日本鉄道の縁端警告ブロックは、いずれも三〇センチメートル角であるが、屈曲部の内角にはもう一枚の警告ブロックを設置していない。

(四)ホーム終端に転落防止柵があるか。
      阪神梅田駅、阪急梅田駅、京阪電鉄天満橋駅、京阪電鉄北浜駅、京阪電鉄淀屋橋駅、近畿日本鉄道上本町駅、近畿日本鉄道日本橋駅、近畿日本鉄道難波駅は、狭義の転落防止柵がない。
      一部でも転落防止柵が設置されていたのは,一一駅中三駅にすぎなかった。
      これは、各鉄道事業者において、前記駅舎の形状等の事情を考慮して設置していないものと思われる。

二、近畿地方のJRの主な一一駅の縁端警告ブロック並びに転落防止柵の設置状況。
  (一)ホーム縁端と縁端警告ブロックの間に八〇センチメートル以上の間隔があるか。
      調査した範囲では、すべて八〇センチ以上の間隔があった(No48〜86)。
      JRの駅はほとんど地上駅でもともとホーム幅に余裕があることや、JRの東西線の地下駅は最近できたもので、ホーム幅・ホーム縁端との距離を十分とるよう柱・階段の位置等を考慮して作られていることによるものと思われる。
   (二)ホーム終端部において、縁端警告ブロックは囲い込み又は線路の反対側に屈曲しているか。調査した範囲では、すべて囲い込み又は線路の反対側に屈曲している(No45〜86)。
   (三)ホーム終端部の縁端警告ブロック屈曲部の内角にもう一枚の警告ブロックが設置されているか。調査した範囲では、JRの縁端警告ブロックは三〇センチメートル角であるが、縁端警告ブロックの屈曲部にもう一枚の警告ブロックを設置しているものは認められなかった(No45〜86)。
  (四)ホーム終端に転落防止柵があるか。
     大阪駅の〇番線から一一番線の一二本の乗り場のうち、七つにつきまったく転落防止柵がない。
その他のJR北新地を含む一〇駅のうち、五つにつきまった く転落防止柵がない。JRは、時間帯により編成車輛数が大きく異なること、また車輛の種類によって車長が異なることなどから、一律にプラットホームの有効長を確定できないために転落防止柵の設置ができないものと思われる。ガイドラインも規則もこのような取扱を許容しているのである。


    三、これら他の鉄道の縁端警告ブロックの設置状況、転落防止柵の設置状況と大阪市地下鉄のそれらを比較しても決して大阪市地下鉄の設置状況が劣るものではなく、かえってそれらよりも整備が進み、かつ合理性のある設置方法を採っているものであることが判明する。


第四、第一〜第三に記載した事実からみて、本件ホームの設置又は管理に瑕疵はなく、被告は国家賠償法上の損害賠償責任も旅客輸送契約上の損害賠償責任も負担するものではないことが明らかである。

以  上


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