佐木訴訟の概要と当会の取り組み
佐木訴訟の流れ
佐木訴訟の流れ ・第1審(大阪地方裁判所1009号法廷) 1999年4月8日 大阪市を相手取り、本件事故現場(地下鉄御堂筋線天王寺駅 中百舌鳥方面ホーム東端部)の早期改善(転落防止柵の設置など)を求めて大阪地方裁判所に提訴 原告側(佐木理人):竹下義樹弁護団長、岸本達司弁護士、以下6名 被告側(大阪市):飯田俊二弁護士、川口俊之弁護士 1999年6月28日 第1回口頭弁論 林圭介裁判長 原告側:訴状の読み上げ 被告側:訴状に対する答弁書の読み上げ 1999年9月13日 第2回口頭弁論 市営地下鉄において、駅ホームの転落防止柵について列車停車位置より前方5メートルは設置しないという内部規定が存在することが判明 1999年11月22日 第3回口頭弁論 1989年から1999年の間に、市営地下鉄において30名以上の視覚障害者が駅ホームから転落し、うち3名が死亡していたことが判明 2000年2月14日 第4回口頭弁論 原告側:主に法律論 被告側:近畿圏内の複数の鉄道事業社における点字ブロックの敷設方法や転落防止柵の設置状況についての報告など 2000年4月10日 第5回口頭弁論 中本敏嗣裁判長に交代 原告側:「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン」や「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備ガイドライン」の解釈の表明と立証計画の公表など 被告側:東京都営地下鉄・帝都高速度交通営団における駅ホームの施設整備状況の報告と立証計画の公表など 2000年6月26日 第6回口頭弁論 原告側:京都市営地下鉄における駅ホームの施設整備状況の報告や「視覚障害者駅ホーム転落事故アンケート」(ブルックの会実施)に基づく主張など 被告側:本件事故現場の縁端点字ブロックをホーム終端まで延長した理由の説明など 2000年9月11日 第7回口頭弁論 原告側:被告側の前回主張に対する反論など 被告側:原告側の前回求釈明に対する回答など 2000年12月4日 第8回口頭弁論 原告側:被告側の前回主張に対する反論や数名の視覚障害者からの意見書の提出など 被告側:原告側の前回求釈明に対する回答など 2001年2月5日 進行協議 原告・被告双方からの書面提出と証人尋問の打ち合わせなど 2001年5月7日 第1審証人尋問 視覚障害者の歩行特性や駅ホーム転落事故についての専門家に対する尋問:村上琢磨氏(東京都心身障害者福祉センター)、麦倉哲氏(東京女学館短期大学) 2001年6月11日 第1審証人尋問 佐木理人(原告)、田宮義司氏(地下鉄御堂筋線天王寺駅駅長(事故当時)) 2001年7月23日 最終弁論 法廷でのこれまでの議論の内容を「争点整理」し、証人尋問の内容を踏まえた上で、原告側、被告側より最終書面の提出と読み上げを行う 2001年10月15日 第1審敗訴 佐木訴訟第1審の判決の言い渡しと判決理由の公表 ・控訴審(大阪高等裁判所別館81号法廷) 2001年10月29日 第1審の判決を不服として、大阪高等裁判所に控訴 2002年2月15日 控訴審第1回口頭弁論 加藤英継裁判長 本件事故前の1995年8月に障害者団体から点字ブロックと転落防止柵の設置基準の見直しを求める要望書が提出され、また、近畿管区行政監察局より指導の通知がなされていたことが判明 2002年4月3日 控訴審第2回口頭弁論 本件事故前の1995年7・8月に市営地下鉄において、駅ホームにおける点字ブロックや転落防止柵の設置基準変更の検討会議が持たれていたことが判明 2002年6月5日 控訴審第3回口頭弁論 吉原耕平裁判長に交代 控訴人側(第1審原告・佐木理人):準備書面の読み上げ 被控訴人側(第1審被告・大阪市):求釈明への回答の読み上げなど 2002年7月31日 控訴審第4回口頭弁論 控訴人側:準備書面の読み上げと本件事故の様子を再現したビデオを法廷において上映するよう求めた申し入れ書の提出 被控訴人側:求釈明への回答の読み上げなど 2002年9月6日 控訴審第5回口頭弁論 佐木理人(控訴人)が、本件事故当時実際どのようなルートを歩いていたのか、そして 頭の中ではどのようなルートを歩いていると考えていたのかということを再現したビデオを高裁別館13階ラウンド法廷にて上映 控訴人側:愼英弘氏証人採用についての意見書の提出 2002年11月15日 控訴審証人尋問 視覚障害者の単独歩行の意義や、本件事故以前に、障害者団体が駅ホームの安全性に関しての申し入れを行っていた事実などの確認:愼英弘氏(花園大学) 2003年1月20日 控訴審第1回和解期日 2003年2月27日 控訴審第2回和解期日 2003年4月23日 控訴審第3回和解期日 2003年5月30日 控訴審第4回和解期日 2003年6月30日 和解成立 2003年7月25日 大阪市営地下鉄終電後、本件事故現場である御堂筋線天王寺駅ホーム東端部分に転落防止柵が設置される |
佐木訴訟和解に関する当会見解
「ブッルクの会」代表の加藤俊和です。 すでに、佐木理人さんご本人からお知らせがあり、報道機関からもニュースが配信されておりますように、佐木訴訟は和解が成立いたしました。 以下に、佐木訴訟を支援してまいりましたブルックの会の見解を書かせていただきます。 佐木訴訟は、6月30日、和解が成立しました。 視覚障害者の歩行の自由と安全を考えるブッルクの会としての見解です。 1995年10月、大阪市営地下鉄御堂筋線の天王寺駅ホームで全盲の佐木理人さんが電車に巻き込まれて線路に転落し命に関わるかと思われる重傷を負いました。しかし、大阪市営地下鉄はなんら誠意を示示すことがなかったので訴訟になりました。そして、第一審は思いもかけず敗訴となりました。 しかし、佐木さんがなぜ事故にあったのか、その原因はどこにあるのかが十分に解明されておらず、しかもこのままでは、本人の不注意が原因であるかのようにすら思われてしまうため、佐木理人さんは控訴しました。 控訴審では、視覚障害者には一人で歩く権利があること、間違ってホームの端にいったときに、高速で通過する電車から身を守るための柵すらなかったこと、また、これらの要求は佐木さんの事故より以前に身障者団体から出されていたこと、などが判明し、控訴審を闘ってまいりました。 そして、裁判所から和解の道をを探ってはどうかとの打診があり、双方で検討を進めてまいりました結果、6月30日に和解が成立いたしました。既に報道もされていますが、和解の内容は次のとおりです。なお、分かりやすくするため、和解原文どおりではありませんがご了承下さい。 大阪市は、視覚障害者のホームからの転落事故等の発生防止を目的とし、今後とも視覚障害者にとって安全かつ利用しやすい駅を実現すべく努力する。 大阪市は、佐木理人に対し、本件の和解金として金300万円を平成15年7月31日までに支払う。 大阪市は、本和解成立後に、諸般の事情を考慮し、大阪市営地下鉄御堂筋線天王寺駅1番線ホーム東端部分に限り、別紙(省略)図記載の転落防止柵を設置する。 佐木理人は、その他の請求を放棄する。 佐木理人と大阪市は、本件に関し本和解条項に定める他、何らの債権債務のないことを相互に確認する。 訴訟費用は各自の負担とする。以上です。 さて、視覚障害者の歩行の自由と安全を考えるブッルクの会は、佐木理人さんを強く支援してまいりましたが、それでも一審が敗訴となったときには、絶望感すらただよいました。 しかし、このままでは視覚障害者が一人で歩く権利はどうなるのか、安心して地下鉄を利用できないのではないのかという、ブルックの会会員をはじめ、大勢の方々のご支援によって、佐木理人さんは控訴いたしました。 この控訴審の1年半余りの間も、いろいろな方々が証人として重要な証言をして下さり、法廷にはいつも大勢のみなさまが詰めかけて下さいました。このことが、佐木さんをはじめ、弁護団ににどれだけ大きな支えとなったか、大阪市に対しどれだけ圧力となったか測りしれません。また、団長の竹下義樹弁護士をはじめ、弁護団のみなさまがそれこそ夜遅くまで資料の準備に当たられていたことも忘れるわけにはいきません。 いまここに、和解の日を迎えることができました。 この6項目の条件に、少しものたりなく感じられる方もおられるかもわかりません。しかし、大阪市の努力目標を明確に提示させたこと、佐木さんの言い分を認めて、ここでは佐木さんの巻き込み転落のあった場所だけですが柵の設置が明示されたこと、そして、300万円の和解金を大阪市が支払うことなどは、事実上勝訴にも近い内容と評価できます。 この佐木訴訟の結果によって、これからは大阪市営地下鉄はもとより、他の公共交通機関においても少なくとも危険な場所には柵の設置が必要になり、再びあってはなりませんが、万が一設置されないなど配慮がされていないところで事故が発生したら、今度は鉄道事業者の責任は以前にも増して免れないことにもなります。 あらためて、ご支援下さいましたみなさまに心から御礼申し上げます。これからも、ブルックの会としても視覚障害者の歩行の自由と安全を目指してよりよい街作りのために活動していければと存じております。 ご支援、本当にありがとうございました。 2003年6月30日 ブルックの会代表 加藤俊和 |
「佐木訴訟」和解成立を迎えて
テレビや新聞で既に報道されましたように、2003年6月30日、「佐木訴訟」の和解が成立いたしました。 感無量という感じもありますが、最後は非常にあっけなかったなという気持ちでもあります。 事故から8年、提訴から、4年家族や弁護団のみなさん、そして、本当に様々な立場の方に支援していただいた事でこの日が迎えられたと痛感しています。 難しい立場でありながら情報提供をしてくださった方々、お忙しい中を遠路傍聴や調査活動に駆けつけてくださった方々、感謝の気持ちでいっぱいです。 今回の和解条項をご覧いただきご理解いただきましたように、大阪市側に本件事故現場の危険性を認識させ、転落防止柵を設置させ、そして今後の公共交通機関のありかたについて言及させた事は非常に大きな成果だと思います。 この和解成立をきっかけに、大阪市営地下鉄に限らず、様々な交通事業社が、視覚障害者の駅ホームからの転落や、その他交通弱者といわれる方々の直面している問題に対して、当事者の声を反映させた設備改善を積極的に進めていくことを心から願っています。 また、私たち公共交通機関の利用者もどんどん声を上げていって、安全で利用しやすいものを求めていこうではありませんか。 訴訟の終了がまだ十分実感できず、戸惑う日々をしばらく過ごすかと思いますが、残された一つの大きな責任として、本訴訟の内容や成果を十分できるだけ多くの方に知っていただくように努めねば戸考えております。 いままで心からの応援を寄せていただき本当にありがとうございました。 本訴訟が終わりではなく、一つの始まりとして、身を引き締めて新たな流れを作っていきたいと思いますので、今後ともご支援・ご協力の程どうかよろしくお願いいたします。 |