Q. 目の見えない人はどのようにして歩いているのですか?

A.白い杖を用いたり、盲導犬を使用したり、家族やガイドヘルパーを伴ったりして歩いています。どの歩行方法が一番いいとか「こうするべきだ」ということはなく、それぞれの視覚障害者が、自身に応じた方法で自由に安心して歩ける事が大切です。

Q. 目の見えない人が街を歩くときに、特に気をつけていることは何ですか?

A.視覚障害者が単独で街を歩く時には、いつも「落ちる、ぶつかる、つまずく、迷う」といった危険と隣り合わせであるといわれています。例えば、駅ホームから線路に“おちたり”、電信柱や看板などに“ぶつかったり”、階段などの段差に“つまずいたり”、道に“迷ったり”といったようにです。これら歩行上のトラブルは、本人が怪我をする可能性もありますし、命を落とす可能性もあります。ですから、視覚障害者は、いつも細心の注意を払って街を歩いているのです。

Q. 電車やバスの中で目の不自由な方を見かけたら、座席を譲った方がいいでしょうか?

A.視覚のみに障害をもっている方に対しては、わざわざ席を譲ることよりも、もし車内に空席があれば、その位置を知らせていただいたり、その席まで案内していただく方が助かります。視覚障害者の中には、車内が混んでいるかすいているかを車内の雰囲気で分かる人がいるのですが、そのような人でさえ具体的にどの場所に空席があるのかを見つけることはとても難しいのです。

Q. 「佐木訴訟」ではどうして損害賠償を求めているのですか?

A.「佐木訴訟」の目的は、事故現場の早期改善を求める事と視覚障害者が直面している歩行の危険性を社会にしってもらうということにあります。しかし、日本の裁判制度の関係から「事故現場の早期改善を求めること」や「社会への啓発」といった理由で裁判を起こす事はできません。そのため、やむを得ず「国家賠償訴訟」という形を取っているのです。

Q. 「佐木訴訟」で焦点になっている転落接触事故で、佐木さんは、そんなにひどい怪我をしたのですか? もう、元気になっているのではないですか?

A.佐木さんは、1995年の事故で、何とか命は助かったものの、左上腕部と左大腿部を粉砕骨折し、頭部を33針縫うという重傷を負いました。数度の手術と2年近くの入院生活を過ごして、ようやく退院することができたのです。現在、左足が2cm短くなり、胡座や正座をすることもできません。また、手足に骨折部分をつなぐプレートが埋め込まれているので、すぐに冷えやすかったり、鈍痛を感じたりなどいくつもの後遺症に悩まされています。手の指を使って点字を読み書きし、足の裏の感覚も使って街を歩く視覚障害者にとって、これらは非常に大きな後遺症になります。

Q. 「佐木訴訟」の弁護団にはどのような人がいるのですか?

A.「佐木訴訟」では、地裁・高裁においてそれぞれ8名の弁護士のみなさんにご協力いただいています。年齢や性別も様々で、大阪・神戸・京都の事務所に所属するみなさんが、総力をあげて、日夜、準備書面などの作成に取り組んで下さっています。

Q. 「佐木訴訟の流れ」を見ると、「和解期日」ということばが出てきますが、「佐木訴訟」は、既に和解することが決まったのですか?

A.「和解期日」というのは、控訴人(佐木さん側)と被控訴人(大阪市側)が、和解の可能性も含めて協議する場と考えていただければいいかと思います。ですから「佐木訴訟」が和解に至るのか判決の言い渡しになるのかはまだ分かりません。ここでは、法廷で行われる口頭弁論と異なり、少し小さな部屋で裁判官と控訴人・被控訴人、そしてそれぞれの代理人(弁護人)のみが出席します。支援者などが傍聴する事は認められていません。

Q. 駅のプラットホームって危ないところですか?

A.視覚障害者が歩行する際に、最も危険な場所だといわれているのが、駅のプラットホームです。視覚障害者の間では、高い転落危険性から「欄干のない橋」ともいわれているほどです。本訴訟を通じて、大阪市営地下鉄において、1989年から1999年の10年間に、少なくとも38名の視覚障害者が駅ホームから転落し、うち3名がなくなられていることが分かりました。

Q. 「ブルックの会」の「ブルック」というのはどのような意味があるのでしょうか?

A.ブルックというのは、地下鉄での事故の後、佐木さんのパートナーになった真っ黒な盲導犬の名前です。佐木さんはそれまで白い杖を使って街を歩いていました。ブルックは、1996年生まれの雌の盲導犬です。その名前の由来は、女優のブルック・シールズからきたと言われていて、「美人になるように」という願いが込められているそうです。

Q. 「ブルックの会」は、団体支援を受けているのですか。

A.「ブルックの会」では、個人会員しか設けていません。これは、主義主張を超えて、できるだけ多数の方々に視覚障害者の歩行の問題に関心を持っていただき、「佐木訴訟」への支援をしていただきたいという思いからです。その結果、「ブルックの会」は、視覚障害者・健常者の方に留まらず、聴覚障害者の方や盲ろう者の方、車椅子使用者の方など日本全国の様々な立場の方にご協力いただいています。