【イベント】2022年11月27日 学習会「踏切の安全とは~~近鉄郡山での視覚障害者の事故から考える」

2022年11月27日、オンライン学習会「踏切の安全とは~近鉄郡山での視覚障害者の事故から考える」を開催しました。参加者は約80人でした。

近鉄郡山駅踏切事故現場および周辺の調査報告

まず、本会代表の加藤俊和が、2022年4月25日に起きた近鉄橿原線郡山駅近くにある第2踏切での視覚障害女性の死亡事故について報告しました。
踏切の構造や事故の状況(女性の歩行経路や考えられる原因)について話しました。
女性は、踏切に入り、警報機の音で立ち止まった後、向きを変えて戻ろうとし列車に接触して亡くなりました。この行動の理由として、立ち止まった際に向こう側の遮断桿手前であったのを踏切手前の遮断桿の手前と勘違いしたためと推測されると説明しました。
この事故の前から「(横断歩道に設置されている)エスコートゾーンに似た設備」がある阪急電車宝塚線の服部天神駅や伊丹線の新伊丹駅近くの踏切の様子を伝えました。
最後に視覚障害者の踏切での事故防止に向けた対策として、「踏切利用にあたっての歩行訓練の重要性」「両側の踏切の警報音を交互に鳴らす『鳴き交わし式』の導入」「非常時は遮断桿にしがみつく)といったソフト・ハード両面の提案を行いました。

踏切利用者等からの報告

その後、実際に踏切を利用する立場として全盲の男性から報告をしていただきました。男性は、踏切を渡るとき、車と接触しないか心配であることや雨天時は特に気を遣うこと、踏切をわたる前には歩道と車道を区切る縁石をたどりながら位置を確かめていることなどの体験を語ってくださいました。

続いて、視覚障害者団体の代表を務める全盲の男性から、新伊丹駅近くの踏切へのエスコートゾーンに似た設備の設置に至った経緯や設置後の状況について報告いただきました。今回の設置の実現は、普段から地元の視覚障害者団体が行政などと連絡を取っていたことによると説明してくださいました。

コメント及び質疑応答

これらの報告を受け、日本歩行訓練士会事務局長で日本ライトハウス養成部部長代理の堀内恭子さんからコメントをいただきました。
2022年6月に改定された「道路の移動等円滑化に関するガイドライン」で、踏切道での安全対策として、踏切手前の視覚障害者誘導用ブロックの設置が標準的な整備内容になり、踏切内表面に凹凸のある誘導表示等の設置が望ましい整備内容になったことなどについても解説いただきました。

参加者からは、多くの意見や質問が寄せられ、活発な情報・意見交換が行われました。

ブルックの会は引き続き、駅ホームだけでなく、踏切での視覚障害者の安全な歩行の実現に向けた活動を続けていきます。

※エスコートゾーンに似た設備:視覚障害者が、車道や線路に誤って進入することを防ぐとともに、踏切の外にいると誤認することを回避するため、「表面に凹凸のついた誘導表示等(歩道等に設置する視覚障害者誘導用ブロックとは異なる形式とする)を設けることが望ましい」とされた。


チラシ(PDFファイル)
チラシ(Wordファイル)

趣旨

私たちブルックの会は、1999年の発足以来、視覚障害者の駅ホームからの転落事故を中心に、視覚障害者の鉄道事故をなくすために何が必要か?を問い続け、数々の学習会、現地調査、これらに基づいた鉄道事業者に対する要望活動を行ってきました。

こうした中、今年4月25日、奈良県大和郡山市の踏切で、全盲の女性が踏切内に閉じ込められ、走行中の列車に接触、死亡するという、たいへん痛ましい事故が発生してしまいました。

私たちが問い続け、そして求めてきたのは、駅ホームの安全だけではなく、自由で安全な歩行環境を実現させることで、見えている人たちとともに、自由に、かつ、安全に参加できる社会の実現です。

そこで、今回は、ブルックの会で実施した近鉄郡山駅周辺の現地調査について報告し、普段、踏切を利用されている当事者の方に、踏切の危険性や安全な踏切利用について工夫されていることなどをうかがい、皆さんとともに、視覚障害者の踏切利用について考えるためのイベントを企画しました。

新型コロナウイルスの感染が未だ終息のめどが立たない中の企画であることから、オンライン形式によって実施いたします。ご自宅などからも参加していただけますので、より多くの皆さんのご参加をお待ちしております。

催しの詳細

名称:学習会「踏切の安全とは~~近鉄郡山での視覚障害者の事故から考える」
日時:2022年11月27日(日) 13:30~16:00
実施形式:オンライン(Zoom)開催
*参加申込をされた方のうち、当日リアルタイムでの参加が難しい方向けに、後日オンデマンド配信を行いました。
主催:視覚障害者の歩行の自由と安全を考えるブルックの会(ブルックの会)
定員:80名(先着順)
参加費:無料

<プログラム>

13:30 開会 挨拶・諸注意
13:40 近鉄郡山駅踏切事故現場および周辺の調査報告
14:10 踏切利用者報告
14:30 休憩(質問メール受付)
14:50 質疑応答
コメンテーター:堀内恭子さん(日本ライトハウス 養成部 部長代理・日本歩行訓練士会事務局長)
15:30 総括(ブルックの会代表・加藤俊和)
15:50 閉会挨拶・事務連絡
16:00 閉会


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